京都伏見と日本三大酒処

〇元来、日本酒には興味が無かったのだが、昨年、東広島市西条の酒蔵案内ボランティアを始めて以来、他のアルコール飲料であるビール系や洋酒系などと較べて、それは非常に日本の歴史、文化に深く根付いている事を学んだ。

 


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それぞれの地域で、独自の進化を遂げた日本酒。その性格上、日本三大酒処の定義も地方によって異なり、西条を三大から外す場合もある。大吟醸酒のパイオニアは何処なのか、等も同様である。それぞれの酒処にはそれぞれのプライドがあり、それはそれで致し方ない事と思われる。

〇ここでは日本三大酒処とは灘、伏見、そして広島県の西条とする。
これは、生産量の順位ではない。有名な酒処の順位である。
西条の酒を全国から来られるお客さんに紹介する為にも、灘と伏見は是非見ておきたいと思っていた。
今年の一月には灘五郷の一つ魚崎郷の白鶴酒造を訪れた。日本最大の酒造会社である。今回の伏見を含め、これで三大酒処を全て訪れたことになった。西条は地元なので。

 

〇2018年9月8日、雄琴温泉から広島への途中、伏見の酒蔵に寄り道した。近鉄京都から急行で10分、桃山御陵駅で降りる。降りると直ぐに商店街が西に続く。数十メートルほど行くと京阪電鉄の線路を横切った。珍しい。これは市電ではなく大阪に行く大手私鉄の線路、それが商店街を突っ切っている。勿論、踏切はある。
駅でもらった地図を頼りに更に百メートルほど行って左手方向へ。直ぐに黒塀が現れ歴史の空気を感じる道路に。見事な犬矢来をあしらった月桂冠大倉記念館へ行く。
(大倉、とは創業者の名前)
西条酒蔵の白壁、なまこ壁はここでは見られない。又、レンガの煙突は低いが一カ所蔵越しに見える。西条のような高い煙突が林立している光景は見えない。

記念館は入館料400円、灘の白鶴記念館は無料だったので高いと思った。でも入場券と引き換えに渡された特製純米吟醸酒(精米率60%)のワンカップが素晴らしかった。
容器は、卵型、キャップがおちょこになっていて、中には別のねじキャップが付いている優れもの。


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急に見方が変わって、すっかり月桂冠ファンになってしまった。今でも捨てられずに本棚に飾ってある。中身は勿論空やけど。そして、家での晩酌は月になった。

煙突の有る広い中庭、展示室や事務所、休憩所などが取り囲み、仕事の人の往来が激しい。昼前の慌ただしさを感じる時間帯。女性従業員に声を掛けて3人の写真を撮ってもらった。アッツと思った。こちらは配慮足りず、彼女は両手に荷物を持っていた。

「少し待ってください」

と笑顔で答えて事務所に荷物を置きに行った。
非常に気持ちの良い応対であった。
教訓、シャッターを押して、と頼むほうは、必ず相手の両手が自由であることを確認すべき。


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〇堀川沿いに歩き、坂本龍馬ゆかりの寺田屋へ。昔伏見城のお堀であった濠川沿いに、十石船が係留されていた。観光客用である。ここは水郷で、風致地区、さぞかし優雅なクルージングであろうか。
大きなしだれ柳が川沿いに漂い、向かいの酒蔵の黒塀と良いコントラストを成している。ここが、伏見の紹介で頻繁に出てくる絶景である。春は勿論見事な桜並木で彩られるはず。今は殆ど緑一色だが。


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宇治川桂川に挟まれて、堀が縦横に巡っている水郷地帯。江戸時代、三十石船はここから淀川に入り難波津から樽廻船で伏見の酒を江戸に運んだ。

寺田屋の周りは結構な人だかりで、写真を撮っている人も多かった。
とにかくこの辺り一帯は観光のメッカなのである。単に景観を人為的にいじっているのではなく歴史文化の礎の上に今も生きている世界。単なる見世物ではない世界。今日初めてこの地を訪れたのだが、素晴らしかった、の一語に尽きる。

寺田屋から桃山御陵駅に帰る途中、黄桜カッパカントリーを発見。道路と道路の間を通り抜け出来るように広場を配置した、黄桜のオープンカフェである。


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黄桜酒場に入って地ビールを飲むことにしたが、店内はほぼ満員。奥は見学室への上り坂の通路で、長いベンチが置いてある。

「あそこ、座れますよ」

と店員さんに笑いながら言われた。
でも坂の途中で傾いている。余り座り心地が良いとは思われない。中庭に出ることにした。
雨の後であったが、幸い椅子は渇いていた。テーブルやベンチが程よい感覚で配置されている。


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昨日買った大きめの三本のソーセージをつまみに、京都ビールを飲む。これが三人の昼食も兼ねることになった。

黄桜酒造は歴史が90年ほどの若い会社らしい。
多角経営で、地ビールをはじめレストランなど多角経営。日本酒の持つ歴史と調和させたきれいな施設の酒造会社で、近くの酒蔵では、実際に稼働している工場見学もできるそう。

〇他の二人は、大阪方面に帰るので、京阪の駅、即ち商店街とクロスして走る踏切際の伏見桃山駅で分かれた。
尚、ちなみに鉄道は、近鉄桃山御陵駅東側をJRが走っている。そちらの駅は桃山駅と言う。
鉄道3本が南北に走っていることになる。
その東側の丘陵地帯が海抜100mの桃山丘陵で、伏見の酒を支える伏流水の源である。

〇西条酒蔵との比較を自分勝手にすると、こうなる。
圧倒的に巨大な灘、伏見の酒蔵。
兵庫県京都府丈で日本の全生産量の約半分を占める。
(年間約20万キロリットル、日本全体では約40万キロリットル。他方、広島県の生産量はと言えば、年に約1万キロリットル)

では西条は一体何が違うか、何が有名なのか。端的に言えば駅前から酒蔵が始まり、しかも僅か650mの範囲に、有名な蔵が6社あり、各社それぞれ異なる伝統、特徴、味を持ち、又赤煉瓦の高い煙突が12基現存している事等である。白壁となまこ壁も特徴かな?
日帰りで、徒歩でこれらは余裕をもって見学することができるのである。
灘五郷は東西12キロ以上に及ぶ。

中四国、関西再発見の旅、これからも!